⑨ 3days Bookstore, Wrap-Up

去年の11月より古本屋仲間と準備を始めてきた3days Bookstore、無事に終了しました。
終了日は、自分の荷物や会場ディスプレイに使ったリンゴ箱(30個!)を、自宅の倉庫に戻し終えたのが夜中の十二時過ぎ。
昨日は〆切の過ぎた原稿書きなどたまった仕事を大急ぎで片付け、今ようやくイベントのことを振り返ることができた次第。
主催者である手紙社によると、3日間で300名ほどのお客様にご来場いただいたようです。
本当にありがとうございました。

今回、会場であるEDiTORSが、40坪くらいあるのでしょうか、かなり広かったこともあり、お客様が大変長い時間おられて、じっくり本を選んでいたのが印象的でした。
あと、活字の本を買われたお客様が大変多かったのも、個人的には嬉しいポイントでした。
まだまだスペースに余力があったので、次回は活字の本を大幅に増量したいな、と思った次第。

私自身、久しぶりの「古本だけの」イベントだったこともあり、どうなることかと内心心配でしたが、来て下さった多くのお客様と、たくさんの方々のお陰を持ちまして、いい形で初回を終えることができました。

まだ終わったばかりで、具体的には何も決まってませんが、次回の開催に向けて動き出しております。

また近々、西調布の3days Bookstoreの会場で、皆様とお会いできることを楽しみにしております。

左からMAIN TENTさん、クラリスブックスさん、むしくい堂さん、古書玉椿さん、古書モダン・クラシック、カヌー犬ブックスさん、まどそら堂さん

【3days Bookstore !? ②】そして集まった「7つの古本屋」

前回の続き:【3days Bookstore !? ①】それは「たいした本ないね」の一言から始まった

手紙社のK氏に「やります!」と答えたものの、イベントは一人ではできない。「仲間」がいる。だが私は、調布でこぢんまりとやっているオンライン古書店だ。知名度もなく、人望も全くない(泣)私の中にあるのはただ一つ。お客さんに言われた「たいした本ないね」の言葉。いや、これはただの言葉ではなく「メッセージ」だった。私に対しての、そして古本屋そのものに対しての・・・?

では「たいした本」とは何だろう?それから私は、会う人ごとに「どんな本が好きか」「どんな本を買っているか」聞いて回った。答えは予想だにしないものだった。

ある主婦の方は、文学が好きで「遠藤周作をよく買う」と話してくれた。ある女の子は、親の仕事の関係で、建築関係の本を買うと言う。ある男性は、草花の本と万葉集、奈良・京都の写真集が好きなのだそうだ。そのほか、図鑑を集めている女の子、暮らしにまつわる本が好きな方、推理小説が好き、雑誌が好き、絵本を集めているなどなど。
いくつかを除いて、どれも私が東京蚤の市に持っていかないタイプの本ばかりだった。マニア受けするような、古本屋として「オッ」と思うような貴重な古い本を挙げた人は一人もいなかった。本好きにもいろんなタイプがいる。だが多くの人たちが「そこ」に求めているのは、えてして古本屋が「珍しくもないもの」として軽視しがちな古本、それも驚くほど「多様な」本であった。

ここでふと、考えてみる。
古本屋を長くやっていると、表紙の見栄えがする本、同業者が持ってこないような珍しい本に、だんだん意識が向いていく。それは仕方がないことだ。逆に市場に出回っていて、古本屋として集めるのにさほど苦労しないような本は、イベントにも持っていかず、取り扱わなくなっていく。だが、同業者が競い合う「オラが本自慢」と、多くの人々が本に求めているものに、ズレが生じているのではないか?
私も、本が好きで、古本屋になった。
だが、私の人生に大きな影響を与えた本 −志賀直哉小林秀雄ジョルジュ・バタイユなど −は、どれも、どこの本屋でも手に入る、珍しくない本ばかりだ。本から受ける影響に、その本の値段や、珍しいかどうかは関係ない。「いい本はいい」のだ。例えば志賀直哉の文庫はアマゾンで1円で売られているが、私にとってはプライスレスではないか!?

よし決まった。古本屋のエゴとか、そんなものは、本の価値とも、お客さんが本に求めているものとも関係ない。古本屋がもう一度原点に立ち戻って、それぞれの得意ジャンルの名著、オススメしたい本、自分が感動した本を、ストレートに持ち寄る、そんな古本イベントにしたい。そのために、いろんな楽器を持ち寄って、一つのバンドが生まれるように、得意ジャンルの違う、しかも扱うジャンルに愛と経験を持っている、そんな背筋の一本通った古本屋さんに参加してもらいたい!

こうして、主催者である手紙社の協力のもと、単に「出店者を募る」と言うより、「趣旨に賛同してくれる仲間」集めが始まった・・・。

まだ名前もなく、形も決まっていない、西調布の手紙舎 EDiTORSで行うイベント。あるのはただ、原点に立ち戻って、余計なものを取り去り、お客さんと本とが出会う新しいカタチ(イベント)を創りたいという熱い思い・・・。

この、事業計画書だったら銀行に叩き返されるような状態で、イベントへの参加を快諾(!)してくれたのが、以下の「7つの古本屋」である。

MAIN TENT(吉祥寺) − 国内外の絵本
古書まどそら堂 (国分寺)− 推理、SF、サブカル、少女漫画etc.
カヌー犬ブックス(府中) − 料理、暮らし、旅など
古書玉椿(調布) − 手芸本、フォークロア
クラリスブックス(下北沢) − アート・デザイン、哲学思想、文学etc.
古書むしくい堂(八王子) − 鉄道、音楽、切手etc.
古書モダン・クラシック(調布) − 料理、暮らし、歴史、ノンフィクション、写真集etc.

3days Bookstoreのフライヤー用に撮った写真。本が浮いてます。