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夜長堂さんの個展に合わせてセレクトした古本

8/4(火)から8/16(日)までの期間、手紙舎 2nd STORYにて開催される、夜長堂さんの個展『ハイカラジャポン うたかた夏祭り』に合わせて、千代紙・着物・郷土玩具・大正~昭和時代をキーワードに古書をセレクトしています。その中から、まずひとつご紹介いたします。

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千代紙文庫 第一集
昭和22年5月25日発行
編集者:岡野他家夫
発行者:八木福次郎
発行所:双美社

椰子の實 島崎藤村
山林に自由存す 國木田獨歩
「海潮音」抄 上田 敏
啄木歌抄 石川啄木
牧水歌抄 若山牧水

千代紙文庫第一集をおとどけします。ささやかながら、抒情ゆたかな詩歌を美しい木版で装った千代紙文庫は、必ずや若い人々のゆめとあこがれをみたし、現代生活のオアシスとして、ことしげき世に暫しのいこひを求める人々のよき伴侶となることと信じます

詩や歌が印刷されている一枚の薄い和紙を折りたたみ、千代紙の木版が印刷された同じ和紙で挟まれたものです。この繊細で美しい千代紙文庫は、昭和22年、八木福次郎さん(日本古書通信社前社長)が作られました。

刊行案内には、〝いみじき古典の香りと、なつかしい新作の情緒を盛った第二集以下を引続いて刊行します。部数に限りあるため、一般書店でお求めできないこともあるかとおもひますから、直接発行所へ豫約されるのが確實と存じます〟とあり、第二集以降もどのような美しい千代紙文庫だったのかが気になるところです。

他にも、夜長堂さんのイメージに合わせて、いろいろな古本を集めてみました(昭和10年代~)。個展にお越しの際は、ぜひお手にとってご覧ください。

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浴衣姿の少女が可憐な「ひまわり 昭和23年7月号」
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千代紙のような柄のかわいい着物姿の少女たち
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ほっかむりと前掛け姿のこけしの「東北のわらべうた」と「東北の玩具」
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「これくしょん 14号」昭和23年 大阪・梅田書房 発行(400部限定)
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小津映画の着物担当であり、雑誌ミセスの着物エッセイでも著名な浦野理一さんの「千代紙友禅」

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浦野理一 著「千代紙友禅」の中から

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ぶらり途中下車の本屋と御岳山

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先週末、御岳山へ行ってきました。
調布から御岳山までは、京王線〜南武線〜中央線〜青梅線〜京王御岳登山鉄道(ケーブルカー)と乗り継いで、二時間ほどでした。私たちが宿泊する宿坊が集まる集落は、ケーブルカーから降りて徒歩で約15分かかります(一般車は入れないため)。

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途中『二俣尾』(ふたまたお)という無人駅に停車したとき、窓の外から古い佇まいの本屋が見えました。よく見ると『多摩書房』という新刊書店でした。
店主は、ちょっと降りてみようかと言っていたのですが、もうすでに夕方になっていて宿坊への到着が大幅に遅れるのを懸念して、帰り(日曜日)に寄ろうとわたしは言いました。

結論から言いますと、日曜日は定休日で店内を見ることはできませんでした。あのとき無理にでも降りれば良かったととても後悔しましたが、それも後の祭りです。
ガラス戸には、以前に紹介されたお店の新聞記事が貼ってありました。東京最西端の本屋だと書いてありました。創業53年、お店に掲げてある大きな〝主婦の友〟の看板は40年前のものだということです(新聞掲載当時)。ぶら下げてある〝主婦の友実用書〟の看板もレトロで良い感じです。

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山の上の方に、武蔵御嶽神社と小さな商店街、そして何軒かの宿坊が見えます。
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多摩川の上流。水がきれいでした。
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宿坊まで歩いていきます。途中、スターウォーズ『ジェダイの復讐』に出てきたような森林が。
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宿坊『御岳山荘』
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食事を頂く大広間
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鮎の塩焼きなどの川魚、手作りで品数が多くどれも美味しすぎる野菜料理など。

宿坊『御岳山荘』は、宿の皆さんがとても親切で、気持ち良く過ごすことができました。それと、束の間の家事をしなくても良い環境で、立て込んでいて持って行った仕事(原稿書きや調べ物など)もだいたいまとまり、ほっと一安心。宿坊ということもあってか、宿泊されているお客様はみなさんとても静かにされていて、食事中にお酒を飲まれていても騒いでいる人はいませんでした。クーラーはありませんが、部屋にある扇風機で十分。山の上は涼しく、朝は寒いぐらいでした。窓の外からは、いろいろな鳥たちのさえずりが聴こえ、目覚まし要らずです。

帰りの日曜日は、本格的な装いの大勢の登山者とすれ違いました。
またいつか奥多摩方面に行く際には、ぜひとも開いているときの多摩書房へ訪れたいと思っています。


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夏の匂い

「洋服中心の夏の衣生活」

この雑誌は、「主婦の友 1958年7月号」の付録です(表紙=いわさきちひろ)。
既製服がまだそれほど一般的ではない時代なので、家族中の下着からお出掛け着に至るまでまかなえるぐらい豊富に作り方が掲載されています。いわさきちひろさんが大好きなので、以前、購入したものです。
私の母は、和裁も洋裁も編み物もしっかり習得している人なので、赤ちゃんの頃からずっと手作りのものを着させてもらっていました。

小さい頃の夏の思い出といえば、畳の部屋で〝蚊帳〟をつって寝たこと、蚊取り線香の匂い、スイカ(大人は塩をふっていた)や茹でたてのとうもろこし、地元が出場している高校野球、『ベルトクイズQ&Q』の〝夏休み子供大会〟などなどいろいろ思い起こされます。

数年前に読んだ、古い暮しの手帖(おそらく第二世紀)に掲載されていた〝奥多摩へ行こう〟という特集。
夏休みに奥多摩の緑豊かな自然を楽しむという記事を読んでいて、ずっと行ってみたいと思っていました。
そして、今週末は奥多摩方面へ行ってきます。豊かな自然があるだけの場所なので、きっと暮しの手帖に載っていたあの頃とそう変わらない(あるいは全く変わっていない)のではないかと期待しています。


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現代怪談考〜わたしが聞いた不思議なお話

わたしの密かな趣味のひとつに、会った人から不思議な話を聞く、というものがある。仕事で出会うひと、友達、あるいは飲み会の席などで、話が途切れた時こう切り出すのだ。
「実は自分不思議な話を集めてまして・・・」
すると大抵のひとが「いやー自分は霊感とかないから・・・」と言って笑うが、わたしは別に、幽霊を見たとか、心霊スポットに行ったとか、そんなテレビでよくやる大袈裟な話が聞きたいのではない。もっと日常のなかで出会った、時が経てばすぐ忘れてしまうような、それでいてどう説明して良いかわからない、そんな不思議な話を集めているのだ。
と、いう風に説明すると、大抵のひとが「そういえば・・・」と言って語り始める。
これがなかなか面白い。
以下にあげるエピソードは、わたしが身近なひとびとから採取した、彼ら自身が見聞した不思議な話である。忘却による欠落はあっても、わたしは聞いた話に何一つ付け加えていない。だから起承転結もなく、またオチもない。ただ「こういうことがあった」で、ストンと終わる話である。
わたしは、心霊とか、オカルトとか、そういったわたしたちが「無意識に」求める形に加工された話に一切興味がない。でもこの世の中には、わたしたちの常識という管ではアクセスできない、不思議な出来事はあると思う。
前置きはこのぐらいにして、まずはご覧いただきたい。ここから何を読み取るかは、あなた次第(笑

【鳥を操るひと】
これはわたしの写真友達から聞いた話である。名前はTさんとする。
Tさんは東高円寺あたりに住んでいて、休みの日はカメラを持って近所を散歩するのが常だった。
ある休日、その日は朝から天気も良く、Tさんはいつものようにカメラを持って散歩に出た。
杉並区の和田から中野あたりを歩いていて、あるところで屋上に上がれそうな建物を発見した。
屋上からの景色は綺麗だろうと思い、Tさんは上ってみた。
予想通り、屋上からは新宿の高層ビル群など一円が見渡せ、晴れていたせいもあって景色が良かった。

しばらくそこで写真を撮っていると、Tさんは、遠くの方に、たくさん鳥が飛んでいるのを発見した。
鳩かスズメかは分からなかったが、とにかくたくさんの鳥が、円を描いて規則正しく飛ぶように見えたという。
「これはいい」と思ってカメラを向け、よくよく見ていると、円を描いて飛んでいるたくさんの鳥の、ちょうど下の辺りにビルが建っていて、その屋上に小さな人の姿が見えた。さらによく見ると、その人は旗のついた棒のようなものを持って、空に向けて大きく円を描いて回していた。
たくさんの鳥は、その人の棒の動きに合わせて飛んでいるように見えたという。
雲ひとつない青空を背景に、屋上でゆっくり棒をふる人と、それに合わせて動くたくさんの鳥。この不思議な光景をしばらく見て、その日は帰った。Tさんは、その後何度もそこに行ってみたが、同じ光景を二度と見ることはなかったいう。

【樹海荘できいた不思議な話】
数年前、外国人の友達三人と、富士の樹海へ写真を撮りに行ったことがある。富士の樹海、正確には青木ヶ原樹海だが、言うまでもなく、自殺の名所として有名な場所だ。わたしは気が進まなかったが、フランス人の友人が是非に、というので同行した。
青木ヶ原樹海は、予想に反して、素晴らしい場所だった。手つかずの自然が豊富に残っていて、洞窟や鍾乳洞もあり、ダイナミックな自然を堪能できて楽しかった。マイクロバスで大勢観光客も来るし、別に自殺した死骸や骸骨が転がってるわけでもなく(当然だが)、富士山も間近に見れて、自然散策には売ってつけの場所だった。むしろ、これだけの自然の宝庫を、単に「自殺の名所」とするのは勿体ないと思った。

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Googleマップでみる精進湖民宿村の様子

さて、わたしたちが泊まったのは「樹海荘」という旅館だった。
樹海荘があるのは、精進湖の近くの民宿村で、Googleマップで見ると、樹海の只中にポツンと集落があるように見える。そんなことから、一時「秘境の只中に出現する謎の集落!」などと騒がれた場所だ。もちろん実際は謎の集落でもなんでもなく、ただの民宿村である。樹海荘も、清潔で、愛想の良い女将さんがいる、普通に良い旅館だった。
わたしと外人の友達三人は、一日中青木ヶ原の素晴らしい自然を堪能し、夜、樹海荘で酒を飲みながら歓談した。そこに女将さんがお茶を持ってきたので、わたしはいつものように「不思議な話を集めてるんですが・・・」と切り出してみた。「自殺の名所」と言われるほどだから、さぞや、と期待したのである(笑)

女将さんによると、樹海荘のある民宿村は、正式には「精進湖民宿村」と言い、二十戸ほどの民宿が集まっている。この民宿村の人々は、もとは精進湖の近くの村で山の仕事をしていた人たちで、あるとき集団で移住してこの民宿村を始めたそうだ。だからこの村の人たちは、みな近縁・遠縁の間柄だと言う。
そんな訳で、女将さんは長年この青木ヶ原樹海に住んでいるが、残念ながら(?)、幽霊だの心霊だのと言った話は、誰からも聞いたことがないという。「この村の人たちは、みな霊感がないんですかねー」と女将さんは笑った。実際は、そんなものなのだろう。

「ただ・・・」と言って、幽霊話とは関係ないが、最近こんな出来事があった、と女将さんは不思議な話を聞かせてくれた。それはこうである。

民宿村の人たちの多くは、副業として、樹海の浅いところで椎茸の栽培もしている。樹海の環境が、椎茸を育てるのに適しているのだそうだ。あるとき、それはほんの数年前の出来事らしいが、民宿村のある人が、樹海に椎茸を採りに行ったきり帰ってこなかった。半日が過ぎ、日が落ちるに及んで、さすがに「これは何かあった」と思い、民宿村の人々が総出で樹海を探索した。地図で見れば分かる通り、樹海はとてもつもなく広い。樹海を知悉したこの村の人たちでさえも、中で迷ってしまった人を探し出すのは困難だった。結局、その人は見つからなかった。警察にも届け出、皆が心配して待っていると、丁度いなくなってから二日目に、その人は樹海からコロっと出てきたそうだ。しかも、ボロボロの格好で。
話を聞くと、彼は案の定、樹海の中で迷ってしまったそうだ。何時間も歩き続けて、途方に暮れて切り株に座って休んでいると、夜が明ける頃、どこからともなく女の人が現れたのだと言う。それで、その女の人についていくと、今まで見たこともないような、本当に美しい樹海の景色が広がっていたそうだ。その美しい景色の中を、女の人と歩いていると、いつの間にか出てこれた、彼はそう語ったのだと言う。女将さん曰く、「まるで崖から転がり落ちたようなボロボロの格好をしたとっつぁまが、『美しい所を歩いてきた』と力説する様が可笑しかった」そうだ。そしてここが可笑しいのだが、それを聞いた民宿村の人たちは、「とっつぁまは狐に化かされたんだろう」と納得したんだそうである。

これは、「まんが日本昔ばなし」のお話ではなく、二十一世紀の現代に、わたしが実際に聞いた話である。嘘だと思うなら、樹海荘に行って女将さんに聞いてみるといい。樹海で迷って、飢えと疲労のあまり恐らくとっつぁまは幻覚を見たのだろうが、その幻覚(ヴィジョン)の内容がお伽話めいたところも可笑しいし、それを聞いて「狐に化かされた」と納得してしまう民宿村の人々も微笑ましい。
ただ、女将さんによると、「樹海の中で狐に化かされた話」は、親や親戚などからよく聞かされたと言う。そうであるからこそ、この出来事を、村の人たちは「狐に化かされた話」として素直に納得できたのだろう。まさか本当に狐が化かすとは思えないが、恐らくそうとしか表現しようのない「何か」が樹海の中では起こるのだ、そう考えてみると、ちょっとゾッとする。一体「狐」とは何か。とっつぁまは本当は何を見たのか?不思議である。

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樹海荘の女将さん。おわかりいただけただろうか。後ろに見えるのは・・・富士山である。

【絶叫する女】
これは友人のWさんから聞いた話。Wさんは、通勤で中央線を使っている。そして中央線といえば、人身事故が多い路線として有名だ。Wさんも、頻繁に人身事故に遭遇すると言う。
東京で、通勤通学の足として電車を利用する人なら、一度くらいは人身事故に出くわした経験があるだろう。わたしも一度だけある。ただ、Wさんが人身事故に出会う頻度は、ちょっと多すぎるのではないか、Wさん自身そう感じるほどだ。
Wさんが乗る電車が、人身事故を起こしたことは何度もあるし、目の前で人が飛び込むのを見たこともあるそうだ。その度に、人々が群がって轢死屍体の写真を携帯で撮る様子を、不愉快に眺めるという。
最近では、自分が乗っている電車が人身事故を起こすときは、嫌な予感を感じるほどだそうだ。

この時も、Wさんは中央線に乗っていて、阿佐ヶ谷駅あたりで嫌な予感がしたと言う。
電車は阿佐ヶ谷駅を出て、予定通り高円寺駅へと向かって滑り出した。
そして電車が高円寺に差し掛かる頃、丁度駅のホームが見える座席に座っていたWさんの目に、右から左へ立ったまま絶叫する女の姿がザァーーーーーッと通り過ぎて行った。その刹那電車は凄まじい音とともに急ブレーキをかけ、電車は止まった。
Wさんの予感通り、乗っていた電車は人身事故を起こしたのだった。
後に聞いた話では、ある女性の横に立っていた男性が、フラフラと電車に飛び込んだのだそうだ。その一部始終を見た女性は悲鳴を上げ、Wさんの目の前を右から左へ絶叫をあげながら通り過ぎて行った女は、まさにその女性であった。
この光景がしばらく脳裏から離れず、Wさんは電車に乗る度に気分が悪くなったという。

いかがだろうか。以上が、わたしが『遠野物語』の佐々木喜善よろしく、実際に見聞した人から直接聞いた不思議なお話の一部である。他にもまだあるが、長くなったので、また折をみて紹介したい。